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2009年12月01日

●12/1up:【見解】COP15国際会議に向けて−「原発に頼らず、30%削減」は、なぜ必要なのか、そしてどのようにして可能なのか?

2009年12月1日 みどりの未来・運営委員会

 コペンハーゲンでのCOP15(第15回気候変動枠組み条約締約国会議) が近づいています。地球温暖化防止に向けた、京都議定書以降の枠組みやその合意をつくることができるか、ここに人類の未来がかかっています。
 私たち「みどりの未来」も、「原発に頼らず-30%削減」を掲げ、「STOP温暖化!世界同日アクション」に参加し、各地で行動を準備しています。

 しかし、この「温暖化対策」議論の中で、「原子力発電の有用性」が唱えられ、原発回帰の流れが世界的に加速し、今後数百基の原発が世界で新たに建設されようとしています。「環境保護派」の中でも、原発を容認する意見も少なくありません。
 その一方、「反原発」運動の中では、「温暖化説」は原発推進のための陰謀であるとする主張も登場するなど、議論は混乱した状況にもなっています。

 ここで私たちは、温暖化問題とその対策が人類と地球にとってきわめて重大な問題であることを重ねて強く訴えるとともに、新政権が主張する中期目標「25%」ではなく、原発に頼らない「30%」削減がなぜ必要なのか、そしてそれは可能なのか、あらためて明らかにしておきたいと思います。

■懐疑説−「温暖化は本当か?」は本当か?
 温暖化問題への世界的な注目に対して、私たちの運動の身近なところからも「温暖化」自体を疑問視する「懐疑説」がさかんに主張され、中には温暖化説が原発産業の陰謀であるとする意見も見られます。
 しかし、ここで私たちが論じるまでもなく、温暖化が進行していること、そして最近の温暖化はほぼ間違いなく人類活動の影響であることについては、すでに科学的に決着がついています。
 これについては、温暖化問題に関連する領域の複数の科学者が無料で公開している「地球温暖化懐疑論批判」[註1]をぜひ参照ください。この資料では、控えめな態度で、冷静に、懐疑論の主張を厳密に検証しながら的確に批判しています。この資料によれば、そもそも懐疑派の主張が温暖化説自体を歪曲した上で批判していることもよく理解できます。
 また、「懐疑説」の中で原発産業と温暖化説の結びつきを指摘する人々が、石油産業と懐疑説とのつながりについては無視していることも、不思議なことです。原発推進派が温暖化説を有利に利用していることは間違いないことですが、そのことで温暖化問題自体が存在しないことの証明にはならないというあたりまえの論理を、あらためて強調しておかなければなりません。

■「25%」ではなくなぜ「30%」削減が必要なのか、それは可能なのか?
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告は、温暖化を最低限に抑えるための最も厳しい対策を採った場合、先進国全体の削減目標として、1990年比で2050年までに 80%以上の削減、その中期目標として2020年までに25〜40%の削減が必要であるとしています。「25%減」という新政権の方針は、旧政権より大きく踏み込んだものであるとはいえ、この削減目標の最低ラインであり、長期目標を達成するための中期目標としては不十分なのです。しかも、それでも産業革命前から2度Cの上昇は避けられないという事実に注意しなければなりません。
 また、新たな観測データのうちいくつかは、旧来の予測を超え、温暖化の進行は最も危険なシナリオをたどっているという指摘もあります。だからこそ私たちは、さらに一歩踏み込んだ、より厳しい削減目標「-30%」が必要であると考えています。
 さらに、温暖化対策は可能かどうかという問題以前に、避けて通れない課題であるという現実を、あらためてしっかり認識する必要があります。日本では大幅な削減が困難であると受け取られがちですが、たとえば2005年、日本が90年比約8%増加させている一方で、イギリスでは約18%、ドイツでは約15%もの削減を、さまざまな政策の下で実現しています。大幅な削減策は、現実に可能なのです。
 日本国内でも、これまで温暖化問題でさまざまな調査・提言活動を続けてきたNPO「気候ネットワーク」が、「2020年で90年比25%削減は、適切な政策のもとに、国内対策のみで余裕をもって実現可能」という趣旨の試算結果を報告しています[註2]。しかもこのレポートは、麻生政権時に試算された過大な生産水準をあえて前提としています。したがって私たちは、これをさらに現実的なレベルまで引き下げ、加えて積極的な国内施策を展開するとともに、国外対策への支援策を講ずることにより、30%減も充分可能であると考えています。
 また、CO2削減に伴う経済低迷を指摘する主張には、温暖化によって引き起こされる深刻で巨額のリスクや、温暖化対策による新たな産業・雇用創出効果が十分考慮されていないということも指摘しなければなりません。温暖化対策は窮乏社会を意味するものではなく、より地域の生活に密着した、持続可能な産業の育成と雇用創出を通した産業・経済構造の転換、再生可能エネルギーの促進などを通して、将来にわたって私たち自身やこれからの世代が安心して暮らすことのできる社会の展望へとつなげることも可能なのです。

■原発に頼らないで大幅な削減は可能なのか?
 たとえ原発自身にCO2削減効果があったと仮定しても、温室効果ガス排出量のうち電力由来は25%程度、原発はその30-40%ですから、原発によるCO2対策全体に寄与する割合は、低いものです。また、そもそも日本経済にとって原発が必要とされる根拠となっている電力需要見通しは、実態以上に大きく見込まれたもので、実際にはこの数年の電力需要や発電量は横ばいか、あるいは不況の影響もあるとはいえ減少傾向となっているのが実情です[註3]。しかも、電力会社自身が宣伝しているように、原発は他の電力とも組み合わせてはじめてベース電力としての供給が成り立っています。つまり、電力業界や原発を推進する勢力のシナリオにおいても、原発が少なくとも温暖化対策の主役や決定打とはならないことが明らかとなっています。
 上記「気候ネットワーク」の試算は、原発を増設せず、40年かけて順次停止していくというシナリオに基づき、原発に頼らない現実的な削減策が具体的に示されています。しかもこの試算は、前述の通り、余裕をもたせるため過大な生産力上昇シナリオに基づいているので、場合によっては40年ではなく30年、20年という期間で原発から撤退するという想定もあり得ると考えられます。
 さらに、より本質的な問題として、原発の巨大で複雑なプラントの建設、危険な放射性廃棄物とその管理のための膨大なコスト、それらの過程全体でのCO2排出の問題も無視できません。また、ウラン採掘現場での自然破壊や住民への被害、事故や汚染、あるいは労働者被爆の問題は、CO2や温暖化とはまた別の、人類にとって深刻な問題を引き起こすということ現実も、きちんと見ておく必要があります。
 原子力による温室効果ガス削減効果よりも、エネルギー効率化や再生可能エネルギーによる効果の方がはるかに大きいこともすでにわかっています。他の選択肢よりも温暖化対策効果の劣る原発を、その重大なリスクを無視して推進しなければならない合理的な理由はない、と私たちは考えています。

■補足
 ここで述べた見解は、私たち「みどりの未来」も参加する「STOP温暖化!世界同日アクション」のWeb上の「Q&A」にも反映されています[註3]。
 去る11月6日には、日弁連主催の人権擁護大会で、人権擁護という観点から温暖化問題を論じ、温暖化対策の包括的な制度提案も盛り込んだ「地球温暖化の危険から将来世代を守る宣言」も採択されています[註4]。ここでも、宣言本文とその提案理由の中で、原発の温暖化対策は明確に否定されています。
 また、「温暖化対策としての原発」に対抗する「気候を原子力化するな!」というキャンペーンも始まっています[註5]。
 私たちは、ここで示したような見解をあらためて確認し、多くの運動団体とともに「原発に頼らないで-30%」をさらに強く訴えていきたいと考えています。多くの皆様の理解と協力を求めます。


[註1] http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho参照。
例えば懐疑説は、「CO2以外の要因もたくさんあり、縄文時代など人類は過去に今よりも温暖な気候も経験しており、太陽の黒点の活動の変動などの影響も大きい」旨主張しています。しかし温暖化説はそれらの事実をあらかじめ否定しているわけではなく、その上でここ最近の温暖化が人間活動由来の温室効果ガスが主要な原因であると主張しているのです。この資料では、懐疑説がこうした冷静な主張を極端にゆがめているということなども丁寧に指摘されています。
[註2] http://www.kikonet.org/research/archive/mtt/kiko2020-25_091110.pdf参照。2009年11月10日公表。「発電所や素材製造業などの一部の大規模排出源に大きな削減余地がある」とし、「すべての主体を対象に炭素税を導入しながら、大規模な排出源に対してキャップ&トレード型国内排出量取引制度を導入し、これに多様な政策を組み合わせること、さらにすべての再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度を導入することとして、2020 年までの削減の道筋及び削減可能性を試算」したものとなっています。
[註3]たとえば東京電力で見ると、電力需要は、2000年以降増減はあるもののその前の10年間に比べ横ばい傾向(3億kwh以下程度で推移)、最大電力は2001年が最大(6430万kw)でそれ以降は減少傾向となっています。
[註4] http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2009_3.html
[註5] http://greenz.jp/2009/11/17/dont_nuke_the_climate/
posted by 事務局 at 21:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政策・論評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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