2009年6月17日 みどりの未来・運営委員会
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は去る5月25日に地下核実験を強行し、国際社会の非難に反発してさらに次の核実験を準備していると報道されています。この問題について、私たち「みどりの未来」運営委員会は、以下のように見解を表明します。1.私たちは平和を求めるひとりひとりの市民として、そして被爆を経験した日本に住む者として、この核実験に強く抗議します。北朝鮮政府が、食糧などの国際人道支援を必要とする国内状態と困窮する国民を放置し、軍備強化を重ね核実験を繰り返すことは、許しがたい行為です。
2.一方、北朝鮮の強硬姿勢と、日本が米国とともに進めてきたMD計画や在日米軍再編強化、制裁措置などの報復措置の応酬は、日朝平壌宣言(2002年)や六カ国協議(2003年〜)の合意と国交正常化のプロセスを双方が掘り崩し、北朝鮮の経済問題や日本の拉致問題の解決を困難にしてきました。
今回も、衆議院で制裁強化決議があげられ、与野党内部で「先制攻撃」論や「核武装」論などの好戦的・排外的な論調が高まっています。歴史に学べば、これらが問題の解決を困難にすることは明らかです。過去の侵略戦争の清算など、自らが果たすべき責務を誠実に実行してこそ、「対話と圧力」ではなく、「毅然とした交渉」の実現が可能になると私たちは考えます。
3.オバマ・アメリカ大統領は、核兵器を初めて使用した核大国として核廃絶に向けて行動する道義的責任がある、と演説しました。その具体的な行動を、前世紀からの冷戦時代の軍事的緊張関係が続く朝鮮半島で実現させる必要があります。北朝鮮政府も、ただちに核プログラムを放棄して、六カ国協議に復帰するべきです。また、核大国であるロシア・中国をはじめ、その「核抑止力による安全保障」に依拠してきた全ての関係各国が、軍縮と平和の実現、その前提条件となる相互の信頼の醸成に向けた誠実な取り組みを具体化させなければなりません。
そのためにも、私たちはNPT再検討準備会議でNGOが提案している「東北アジア非核地帯構想」を支持し、北朝鮮が復帰した六カ国協議の場でその構想の実現に向けた協議がなされるよう強く求めます。
4.平和の実現に向けた枠組みを具体的に動かし、加速させて行くのは、国家の力だけではありません。
その潜在的な力は、第一に自治体にあります。国家の対立を超えて、市民生活に最も近い自治体が、平和共存のための重要な主体となるべきです。すでに、被爆地である広島・長崎が呼びかける平和市長会議には、世界で2000を超える都市・地域が参加し、その「核兵器廃絶のための緊急行動」(2020ビジョン)[1]には国際的な支持が高まり、ブッシュ政権下の米国においても、全米市長会議が満場一致でこれに賛同しています。その「2020ビジョン」は、日本国内で非核自治体宣言協議会での決議を経て、ついに全国市長会でも賛同されるに至っています。
全国の自治体が、これまでよりもまして、この地域の平和と安定と相互信頼醸成のための主体となって、具体的な取り組みを前進させるべきです。各地で活動する自治体議員も参加する私たち「みどりの未来」も、市民とともにその取り組みを支えるべく力を発揮したいと考えます。
5.平和を実現する第二の、そしてより重要な力は、私たち市民ひとりひとりにあります。GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)東北アジア地域行動提言[2]でも具体的に示されているように、非核化を支持する世論喚起を図り、特に平和市長会議の「2020ビジョン」を支持する声を高めていく必要があります。また、核の非人道性と愚かさを、身をもって告発している日本および朝鮮半島の被爆者の存在とその想いに、私たちひとりひとりが真摯に向き合う必要があります。平和のための深い議論と世論の喚起を通して、自治体や国の政治、そして国際的な枠組みを動かしていかなければなりません。
そのためにも、私たちが住む地域、国、そしてアジアや世界の、民族や国籍を超えた人々の相互理解を通した信頼の醸成も重要です。特に、日本に在住する朝鮮半島出身の人々が、差別や抑圧なく暮らすことのできる社会をはぐくみ、地域社会を構成する全ての人々が、平和を創り出す主体となる未来を、私たちはともに築いていきたいと考えます。
註
[1] 「核兵器廃絶のための緊急行動」(2020ビジョン)
http://www.mayorsforpeace.org/jp/ecbn/index.html
[2] 「GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)東北アジア地域行動提言」
http://www.peaceboat.org/info/gppac/agenda_050401.pdf
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