前川 武志/みどりの未来会員
未曾有の経済危機にあっている。「百年に一回の危機」とはあの1927年の金融恐慌よりも根深いことをいっているのであろうか。
あるエコノミストは、アメリカ経済が5年分の消費を先食いした結果として経済危機がある。5年間借金を返すことに専念すれば5年でもとに戻るが、もしそうすると経済は壊滅的打撃を与えられることになるので、5~7年の期間が経済回復に必要との見込みを書いている。
さて、春闘がはじまったがいまの局面における労使の課題は、ワークシェアリングを実施し、雇用を増やすことである。雇用を守ることでは不十分である。ワークシェアリングとは端的にいうと、これまで2人でしていた仕事を一人当たりの労働時間を少なくし3人で行うというものである。これには、雇用維持型と雇用拡大型がある。取り合えずはその両方を対象とする。一部労組は賃上げにこだわっているようだが、少々の賃上げを実施したところで、それが経済回復のための消費回復につながるわけではない。
なぜなら、賃上げを実施できる好況企業はごくわずかでしかない。それどころか、労働者の中に一部の安定層と大量の不安定層が存在し、さらにその格差を拡大することにしかならないのではないだろうか。一般には格差の拡大の責任は企業や政策に原因があると思われているが実は労働組合も手を貸していたのである。
いまも、企業の生き残りのために、派遣や非正規雇用の労働力は不可欠であると認識する労働組合はすくなくない。ある自治体交通労組は経費削減の社会的圧力を受け、賃金が約半分の嘱託運転手を導入することに同意している。こうして、「組合員の権利は守られて」不安定雇用が増加している。自分の労働条件を切り下げることなどいいだせないかもしれないが、外から見ると賃金を7割にして正規職員を確保することのほうが大事なのではないか。もしそうすることができれば、労組への社会的な期待は向上する。それは労働組合に対する社会的な認知度向上するのではないだろうか。私は19歳から55歳までなんらかの形で労働組合に関わってきたが、その活動が社会な意味が失われていることに失望している。直接にかかわりがある組合員のためだけの閉ざされた労働組合でなく社会な意味をもった活動を行なう開かれた労働組合の活動を念願してやまない。
財界が主張する「ワークシェアリング」は『雇用維持型』であり、賃金を引き下げて雇用を確保しようするものである。そこに労働組合が土俵に乗ることへの警戒感を持っている。財界にされるがままならそうなってしまうかもしれない。むしろ、だからこそ労働
組合が自らの賃金を引き下げてでも雇用の確保=雇用拡大を要求することが必要なのである。競争社会の中で、賃金上昇は工場が海外に移転し経済の空洞化を招く結果となった。日本から仕事を奪ったはずの中国でさえ賃金が上昇するとベトナムなどの国へ仕事が移転している。むしろ、この機会は永年実現のしなかった時短を実施しゆとりを取り戻す絶好のチャンスともいえる。何時職を失うかもしれない不安に対して、個人の取れる対策は貯蓄で備えることだけである。それでは、経済循環が機能しない。最終消費すなわち個人消費が安定してこそ、経済の安定がある。競争社会に身をおき、脱落しないために必死に働く、そのことが今日の格差社会ややさしさの欠けたとげとげしい社会を維持してきたのである。
もう、そこから抜け出そう。
政府は雇用の危機に対して、企業に雇用の維持をお願いするばかりである。そのしりから、日経連会長、御手洗氏のお膝元CANONから派遣きりが実施された。財界の顔色をうかがう自民党政府では雇用の危機に対してまったく無力である。正規雇用から派遣への企業の需要は「いつでも首切りが可能」ということもあるが、社会保険の負担が重く感じているということにもある。
企業に雇用維持の助成金を出すよりもこの社会保険料負担を軽減することのほうがより社会的な効用が大である。
なぜなら、助成金は企業の赤字補填になるかもしれないが、雇用を増やすことには直結しないからである。
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